G10
ハウジング(WP-DC48)とカメラ本体(+ハウジングの付属品)

Canon PowerShot G15による水中撮影のレポートです。

G15はCanonのコンパクトデジカメのシリーズの中ではG1Xの次に続くフラグシップモデルで、Gシリーズとして2000年に発売されたG1から続いています。G15は2012年現在でGシリーズの最新モデルです。このクラスのカメラは、いわゆる高級コンパクトといわれるジャンルに含まれますが、G15はその中で数少ない純正ハウジングが用意されているモデルでもあります。

これまで三つ前のモデルのG10を使っていたのですが、G15に買い換えました。G15そのもののレポートは、他のHPにもたくさんあると思いますので、ここではG10と比較しながら、ハウジングを中心にG15の水中撮影についてのレポートをしたいと思います。

G15の基本機能

G15は2012年の10月から発売されました。撮像素子は1/1.7型のCMOSで、一般的なコンパクトデジカメで使われている1/2.3型よりも一回り大きなサイズです。レンズは28mm~140mm(35mm換算)の、F1.8~F2.8です。画素数は1210万画素で、画像処理にはDIGIC5と呼ばれる一眼レフにも使われているチップを使用しています。RAW撮影に対応し、露出補正はダイアルで調整でき、コマンドダイアルが用意され、さらにマニュアル設定も豊富にできるなど、さすがフラグシップモデルといった感じです。

  G10 G15
撮像素子 1/1.7 CCD 1/1.7 CMOS
画素数 1470万画素 1210万画素
焦点距離 28mm~140mm (35mm換算)
F値 F2.8~F4.5 F1.8~F2.8

CanonによればG15はキャノンのコンパクトカメラの中では最速のAFということだったので、G10と簡単に比較してみました。

下の表は、シャッターボタンを押すと同時にストップウォッチのボタンも押して、AF合焦マークがでたらストップウォッチを止めるようにして何度か撮影してみただいたいの結果です。合焦マークがでてから、実際にストップウオッチが止まるまでに少しタイムラグがあるし、そもそも厳密な計測をしているわけではないので、数値そのものは正確ではありません。ただAF合焦までの速度が、G10よりかなり速くなっていることはわかると思います。

AF合焦までの時間 G10 G15
ワイド端 距離約30cm 約0.7~0.8秒 約0.2秒以下
テレ端 距離約50cm 約1.5秒 約0.8~0.9秒

感覚的にはワイド端では、ほとんど瞬時にAFが合う感じでした。上記の表の約0.2秒というのは私のストップウォッチを押すまでのタイムラグに近いと思います。

次にシャッターボタン全押しをして撮影できるまでのタイムラグを測って見ることにしました。パソコンの画面にストップウォッチを表示して、10秒単位の表示になったところでシャッター全押しをして撮影された画像でタイミングをチェックしました。水中を想定してすべてフラッシュはONです。一応、撮影ごとに別の場所でAFを合わせ直すようにしてあります。カメラとの距離は30cm程度(テレ端は撮影できるギリギリぐらい)としました。

撮影タイムラグ(ワイド端)
G15 1.133秒 0.963 0.923秒 0.923秒 0.854秒
G10 1.44秒 1.188秒 1.169秒 1.112秒 0.884秒
撮影タイムラグ(テレ端)
G15 0.89秒 1.177秒 1.297秒 1.58秒 1.258秒
G10 1.421秒 1.353秒 1.413秒 1.349秒 1.578秒

結果としてはAFの速度差ほどは、違いが現れませんでした。ちょっとG15の方が速いかもくらいです。ちなみにNEX-5+18-55mmの18mmでも試してみましたが、G15のワイド端と同じぐらいの時間でした。

水中撮影ではフラッシュを使用しての撮影が基本となると思います。G10での水中撮影では、一回撮影して、さらに次に撮影しようとしたときに、AFに時間がかかるということと、フラッシュのチャージの時間もかかるため、なかなかシャッターが降りず、シャッターチャンスを逃すことがあったのが不満点でした。G15でこの点の改善があるのか試してみたのが下の表です。シャッターボタンを押して撮影して、すぐにシャッターボタンを押しなおして、何秒後に撮影できたかをストップウォッチで測ってみました。数値はこちらも厳密なものではありません。

  G10 G15
単写の撮影間隔(フラッシュ時、撮影後再生切) 約4秒 約2.7秒

G15ではかなり改善されているようですね。

さらにG10の場合、「撮影後の画像再生時間」に指定できるのは2秒が最短(もしくは切)のため、撮影後再生をONにすると、5秒以上の間隔があきます。G15では「撮影後再生時間」の指定に”クイック”という選択肢が追加されたため、撮影後再生をONでも3秒程度の間隔で撮影できました。

マクロについてはどうでしょうか?スペックによるとマクロモードでのワイド端の最短撮影距離は同じ1cmで、テレ端ではG10の方が10cmぐらい近くで撮影できます。この辺りはG15のレンズのF値が明るくなった影響がでているようです。

撮影可能な最短距離(マクロモード) G10 G15
ワイド端 1cm
テレ端 30cm 40cm

ただし、G15の場合、最後のズーム域で最短撮影距離が大きくなるようで、その直前ぐらいまではむしろ寄れるレンズになっています。いくつかのズーム倍率で最短距離表示を比較してみると、

最短距離表示の比較(マクロモード) G10 G15
16mm (73mm ... 35mm換算) 10cm  
17mm (78mm)   8cm
18mm (83mm) 20cm  
24mm (110mm)   17cm

マクロモード時のズームバー表示

ズーム110mmでもG15であれば20cm以下まで近づけて撮影できます。

ズームレバーを操作するとズーム位置を示すズームバーが表示されますが、G15ではマクロモードの場合、最短撮影距離が長くなる部分については黄色の表示がでます。ズーム範囲が黄色の領域になると、画面右側にある花のアイコンが灰色になります。

というわけでとても便利になったのですが、それはそれでユーザの願いは更に拡大するもので、ワンアクションで黄色表示の直前までズームしてくれたらと思ってしまいます。

G15にはステップズームという機能(マニュアルP137)があって、28mm-35mm-50mm-80mm-100mm-140mmと一気にズームすることができます。黄色表示の直前というわけではありませんが、100mmなら黄色表示の少し前ぐらいで、マクロモードでは11cmまで寄れるので、この焦点距離を使うと便利そうです。

この機能を使うためには電子ダイアルもしくはコントローラーホイールのいずれかに機能を割り当てる必要があります(マニュアルP162)。ただ純正ハウジングでは電子ダイアルおよびコントローラーホイールのいずれも直接動かすことができません。そのかわり、左上に矢印付きの「S」とかかれたショートカットボタンを押しながら、背面の左右ボタンを押せばコントローラーホイールを回したのと同じ動作ができます(上下ボタンで電子ダイアルを回したのと同じとなります)。ちょっと面倒になりますが、この方法であれば純正ハウジングでもステップズームを使うことができます。


G15(左)とG10(右)

ISO感度の設定関連の機能についてはG10からかなり変わっています。G10ではISOブースターというのがあって、シャッター速度が低速になったときに、ワンボタンでISO感度をアップすることができるようになっていました。また専用のISO感度ダイアルも用意されていました。G15ではダイアルがなくなり、ISO感度については個々に設定できる他に、AUTO時にアップする上限を設定できるようになりました。またISO感度の上がり方についても3段階の設定ができるようになりました(早め、標準、遅め)。

G15は見た目のコンパクトさを優先させたのか、フラッシュがポップアップ式になっています。ハウジングに入れるときにはフラッシュを上げておく必要がありますが、忘れたとしてもハウジングにフラッシュを上げるためのレバーが付いているので大丈夫です。
※フラッシュをしまうことはできませんが、メニューから発行禁止にすることはできます。

ちなみにG10もG15もAUTOモードではフラッシュにAUTOと発行禁止しかなく、常に強制発光させることができないため、私は水中ではAUTOモードを使ったことがありません(AUTOでRAW撮影を選べないというのも理由です)。


G15本体とハウジングには赤色の動画ボタンが用意されています

動画についてもG15はG10とかなりの違いがあります。G10の場合には、動画を撮影するには必ず動画モードにする必要があったのですが、G15では専用の動画ボタンが用意されていて静止画撮影モードでも、そのまますぐに動画が撮影できます。ハウジングからも使えるようになっていて、しかも背面にあるボタンの中ではこのボタンだけ赤色になっているので、わかりやすいです。

G10で、水中でも何度か動画を撮影しようとしましたが、面白そうな場面を見つけて、さあ撮影しようとモードダイアルを回しているうちにチャンスを逃すことが何度もあったので、専用の動画ボタンは使いやすそうです。

G15はフルHD(1920x1080)で動画が撮れるようになっているところまではいいのですが、フレームレートが24fpsどまりなのが残念です。他社ですと60fpsまでサポートしているモデルなどもあるのですが。

G15ではシーンモードで水中にすると、マクロモードボタンで水中マクロやクイックを選べるようになっています。これはG10にはなかった機能です。
※私は水中撮影は常にRAW撮影なので、シーンモードの水中は使ったことがありません。というのもG10もG15も、シーンモードの場合にはJPEG撮影のみでRAW撮影が選択できないようになっているのです。